symphil

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「人が奏でる音すべてを等しく扱うようにしていました」。自身がコンダクトするフィルハーモニックポップオーケストラ、蓮沼執太フィルのアルバム『symphil』について、蓮沼執太はApple Musicに語る。前作『アントロポセン』から5年ぶりに発表する本作は、2019年に制作が開始された。ほどなくして新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、その影響はかなり大きかったと蓮沼は振り返る。「メンバーが15人もいて、飛沫(ひまつ)があるとされる管楽器もいるし、みんなで“せーの”で合奏するレコーディングスタイルはコロナの観点からするととんでもないという感じで、当初は会うことすらできなくて。でもだんだんと社会の流れが変わっていく中で、僕たちもぴったりとそのタイムラインに乗って時間をかけて制作していきました」 逆境に置かれながらもメンバーたちはリモート録音などの試みも重ね、着実に歩みを進めた。そしてようやくみんなで集まりレコーディングに入ったのは2022年夏のこと。そこでの作業や対話などを通して、“回復”と“共在”というコンセプトが生まれた。蓮沼は言う。「いわゆるオーケストラだと、指揮者がいて、ファーストバイオリンがいて…というように、どうしても音のヒエラルキーがある。それをなくし、ポップにしたいという思いがあった。楽器の音や電子音、環境音、歌、すべての音という音を等しくコンポジションしていくことにこだわりました」 蓮沼執太フィルは生楽器によるアンサンブルをベースとし、そこにさまざまな音色をオーバーダビングすることで唯一無二の音楽性を築いている。「生音の響きからさらに進化していきたい」と蓮沼は語る。タイトルは、“sym-”(共に)と“phil-”(何かを愛する)という2語をつなぎあわせ、“新しいフィル”というニュアンスも込めた。すべての音が等しく並び立ち、美しく響き合うフィルハーモニー。その豊かな音色が、新しい風を連れてくる。

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