本作『Hallgató』は、ドイツのインディペンデントレーベルECMの創立者の一人である伝説的人物、マンフレート・アイヒャーのプロデュースのもとに制作された。収録された楽曲は先人たちの偉業をたたえるものであり、また彼らに哀悼の意を表するものでもある。ギタリストのFerenc Snetbergerとケラー弦楽四重奏団というハンガリーの音楽家たちによる演奏は、魂のこもった生々しいものだ。アルバムの冒頭からリスナーの心を捉えるギター協奏曲「In Memory of My People」はSnetbergerの手による作品で、彼の系譜であるシンティとロマの祖先に捧げられている。続く20世紀ロシアの作曲家ショスタコーヴィチの『弦楽四重奏曲第8番』は戦争の犠牲者を追悼する作品で、本作の中核をなす力強い演奏となっている。後半にはジョン・ダウランドの作品や、サミュエル・バーバーによる「弦楽のためのアダージョ」のオリジナル弦楽四重奏版などの短い楽曲が美しく配列され、さらなる音楽の旅へといざなう。真摯な思いと強烈なエモーションにあふれたアルバムだ。