歌声の美しさと透明感、そして彼女が醸し出す気高さのような雰囲気に満ちた初のフルアルバム。オリジナルのアルバムとしては9曲目までを一つの作品とし、「探偵物語」（1983年）などのヒットシングルはスペシャル編と銘打ったボーナストラックとして収録している。特徴的なのはその9曲の歌詞をすべて女性作家が手掛けたことで、例えば冒頭の「元気を出して」は竹内まりやによる書き下ろしであり、1980年代後半に竹内によるセルフカバーもヒットした。エレガンスあふれる「月のオペラ」は大貫妙子による楽曲。阿木燿子の作詞による「アドレサンス(十代後期)」は大人の階段を上っていく心境が繊細につづられたバラードで、本作の発表が薬師丸自身が二十歳を迎える少し前の1984年2月だった事実を思うと、そのリアルさが強く感じられる。井上鑑をはじめとしたアレンジャーたちがカントリーポップやソフトロックなどサウンド面で多彩なアプローチを見せ、それによってヨーロッパをモチーフにした楽曲たちがより味わい深く響く。一貫して完成度の高い作品であり、セールスチャート1位を獲得、大ヒットを記録した。