時のぬけがら

時のぬけがら

「なくなっていくもの、過ぎていった時間、そこで生まれる喪失感をテーマにしました」。OKAMOTO'Sのギタリストとして活動しながら、2019年に初のソロアルバム『GIRL』を発表したオカモトコウキ。それから約2年半ぶりに届いたセカンドアルバム『時のぬけがら』について、Apple Musicに語る。「コロナ禍に時間ができて、昔のロックのアルバムをまとめて聴く機会があったんです。それで思ったのが、この音楽を歌ったり演奏してる人の半分以上が、もうこの世にはいないんだなということ。でも音源の中では、今生きてる人も、もういない人も一緒に演奏していて、今の自分に影響を与えてる。それがすごいことだなと思って。そんなふうに、ここ2、3年で自分が音楽で感じたことを瞬間真空パックできたらと思って作りました」前作『GIRL』ではすべての楽器とプロデュースを自ら手掛けたが、今回は制作手法を変え、約半数の楽曲で大林亮三(SANABAGUN)を共作者に迎えた。「亮三君と一緒にやることで自分の中に新しいリズムのアイデアを取り入れられたのがすごくよかった」とオカモトは振り返る。「僕はイギー・ポップや(ザ・ローリング・)ストーンズのようなグルーヴの成り立ちはある程度理解しているつもりなんだけど、ファンクやリズム&ブルースの理解はまだそこまで深められていなくて。それとブラジルの音楽——例えば僕はフュージョンバンドのアジムスがすごく好きなんだけど、あの感じを自分ではどう表現したらいいのか分からなくて、そういうところで亮三君がすごく助けてくれて、やりたいことが一気にできたなという達成感があります」本作にはTAIKING、渡辺シュンスケ、黒猫チェルシーの澤竜次、miidaこと沙田瑞紀ら、多くのゲストプレイヤーも参加。そして藤原ヒロシとのユニット、ORDER of THINGSとしての新曲も収録された。彼は語る。「例えば、黒猫チェルシーの澤は昔からの知り合いなんだけど、ちゃんと一緒にやったことはなくて。今回、『蜃気楼』のギターソロは澤が弾いたらよくなるんじゃないかという半ば思いつきで弾いてもらったら、あまりにもよくてソロの尺自体を変えちゃったりとか、そういうことが結構ありました。自分一人でやってたらできなかった意外な脱線があったのがよかった」。ギタリストとしても高い評価を受けるオカモトコウキだが、プレイヤーとしては驚くほどナチュラルな感覚を持っている。「僕はギタリストとしてこだわりが薄いタイプかも。素晴らしいギタリストがいて、その楽曲の中でいいプレーをしてくれるんだったら、自分は全然弾かなくていいっていう考えの持ち主なので。実際に『君は幻』では僕、ビブラフォンしかやってないからね(笑)」。その柔軟な姿勢が、本作の奥深さにつながっているのだろう。 OKAMOTO’Sのメンバーとして、そしてソロアーティストとして、密度の高いアルバムを作り続けているオカモトコウキ。「今はもう本当にすっからかん」と笑うが、その目線は早くも次なるステージへと向かっている。「次は肉体的なグルーヴを追究したい気持ちがあるかな。それこそイギー・ポップのようにシンプルな音楽。ここ4、5年くらいコンシャスな作品を連続で作ってきて、今回それが極まった感があります」

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