フォグランプ

フォグランプ

快感の度合は高いのに、つかみどころや説明の仕方に困る――そのぐらい特異な音楽を奏でてきたバンドである。サウンド面ではUSインディーに直接的な影響を受けながらも、歌のほうでは童謡にも通じるメロディと日本語詞によって和製の郷愁感を装備。そしてこれはそんなファジーなバンド・キャラクターがひとつの形を成した良作だ。特筆すべきは前作「しらない合図しらせる子」でマスタリングを手掛けていた石原洋と中村宗一郎(ゆらゆら帝国の制作陣)がサウンド・プロデュースとミキシングで携わるようになったこと。一方ではピンク・フロイドの「狂気」に刺激を受け、ライヴでフリーフォームな側面を見せるようになっていた彼らは、そうした自由な発想をレコーディング現場に還元したのである。まるで霧の中にいるかのような本アルバムのイメージは、長野の高山で育ったヴォーカル・出戸学の思い出によるものが大きく、それがサイケデリックな雰囲気の根本を形成している。そこには得体の知れない不穏な感覚もぬぐいきれず、神秘性がバンドのカラーのひとつに備わった印象。ゆっくりと、どこまでも続いていくかのような最後の曲 “ワイパー” には、彼らが切り開いたものが集約されている。

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