どうしたって伝えられないから

どうしたって伝えられないから

「どうしたって伝えられないから私は歌にする、という気持ちでこのタイトルにしました」。aikoは、Apple Musicに語る。『どうしたって伝えられないから』と題された14作目のアルバム。それは、2021年の春の訪れとともに届いた。2020年から世界を混乱に巻き込んだ新型コロナウイルスの影響は、aikoの音楽活動にも大きく影響した。予定されていたライブは延期になり、先の見えない不安な日々が始まった。当時を振り返り、aikoはこう語る。「最初は気が気でなくて、音楽を作る気があまり起こらなかったんです。それなら自分の気持ちに身を委ねてみようと思って暮らしていたら、夏くらいに曲を作りたい気持ちが湧いてきました。私にできるのは、曲を作ってレコーディングをして、アルバムを作ること。落ち込んだり悲観的になったりすることもあるけど、作品が出来上がったときには本当に心が救われて、やっぱり音楽がめっちゃ好きやなって思いました」ここに収められた13編の歌を聴くと、いつにも増してaikoの存在を近くに感じられる。歌詞にちりばめられた生活感のある言葉が共感を呼び、感情を揺さぶる。例えば「ハニーメモリー」に出てくる“洗面所”。あるいは「一人暮らし」の中の、“小さな靴下”や“ロンT”。aikoは言う。「コロナの自粛期間中はほとんど家から出なかったんです。なので洗濯はいつもより多めにしたし、部屋のちっちゃなホコリもいつも以上に気になって。そういう生活の中で歌詞を作っていたからかもしれないですね」日常のふとした瞬間に生まれる、aikoの歌。少し不思議な雰囲気のある「しらふの夢」が生まれたのは、ある冬の日だった。「この曲は2021年のお正月三が日に作りました。脱水した洗濯物をパンパンはたいてるときに浮かんで、急いでボイスメモに録音したので、自分の中でも印象に残っています。さらに島田昌典さんが、私がイメージしていた以上の素晴らしいアレンジをしてくださいました。レコーディングではいろんな楽器の音がどんどん積み重なって、深い森に迷い込むような、まさに白昼夢のような感覚に陥りました」生活の中で目にするありふれた風景や、心の中を通りすぎてゆくとりとめもない感情。aikoは日々の断片を見つめ、歌に書き留めていく。今は会えない“あなた”に届くように。中でも本作のラストを飾る「いつもいる」は、その思いを強く感じる一曲だ。この曲でaikoは“あなた”と、“息苦しくても⽣きていこうね”と大切な約束を交わす。「ライブができなくてすごく寂しいけど、ファンの皆さんがお手紙をくれるので、それがすごくうれしいんです。みんなの近況が知れて、友達からいつも連絡が来ているような感じがする。でも、やっぱり寂しいですね。ちゃんと目を合わせて話がしたいなって思います」『どうしたって伝えられないから』というタイトルは、その切実な思いを凝縮したもの。「アルバムが出来上がって歌詞を見ながらタイトルを考えたときに、私はもうどうしたって伝えられない気持ちをここに残したんだなと思って。そんな気持ちでこのタイトルにしました」「ライブでみんなに会える日のことを毎日考えてる」と言うaiko。「無観客ではなく、みんながいる会場のステージに自分が立ったとき、どういう心境になんねやろって想像するんです。きっと泣いちゃうな…。でも泣いたら歌われへんから、我慢して、塩昆布のこととか考えようかな(笑)」

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